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「つみたてNISA」の運用商品の変更は簡単!
ただし“スイッチング”は非課税投資枠の消費に注意
「つみたてNISA」の運用商品を変更することは簡単です。積み立てていた投資信託・ETFの新規購入をストップして、ほかの投資信託・ETFの積み立てをスタートすればいいだけです。「つみたてNISA」で毎年非課税で投資できる金額の上限(非課税投資枠)は40万円ですので、この上限に収まる範囲で投資信託・ETFを購入していれば、銘柄を変えても問題はありません。
しかし、これまで積み立てていた投資信託を売却して、その資金でほかの投資信託を購入する、となると話は別です。保有している投資信託を売却して、その資金でほかの投資信託を購入する(ほかの投資信託に乗り換える)ことを「スイッチング」といいますが、「つみたてNISA」でスイッチングを行うと非課税枠を消費してしまいます。保有している投資信託を売っても非課税枠は戻りませんし、投資信託を新たに購入すれば、その購入金額分の投資枠は消費されてしまうからです。
つまり「つみたてNISA」の場合、これから積み立てる投資信託の銘柄を変更することは簡単にできるものの、これまで積み立てた投資信託を別の銘柄に変えることは現実的ではないのです。
「つみたてNISA」は、非課税になる年間の投資金額が40万円までと限られていますから、売って買ってを繰り返したり、リバランス(ポートフォリオの資産配分を売買することで調整すること)をしたりするのには向いていません。ちなみに「iDeCo」(イデコ・個人型確定拠出年金)ならスイッチングが可能です。
新しく気になった投資信託に変更する場合、
これまで購入してきた投資信託は売らずにとっておく!
では、新しく気になった投資信託の積み立てを始めるときは、これまで積み立ててきた投資信託は、売ってしまったほうがいいのでしょうか。
結論からいうと、基本的には売らずにとっておくのがいいでしょう。
「つみたてNISA」で積み立ててきた投資信託は、新規の購入をストップしてもそのまま保有しつづけることができます。そして、購入した年から20年間は、利益にかかる税金をゼロにできます。投資信託をそのまま保有しておけば、今後、値上がりしたときに売却して利益を得られるかもしれません。売ったところで非課税投資枠が復活するわけでもないので、これまで購入してきた投資信託は持ちつづけて、非課税での運用を続けるのが無難な選択です。
もう一つ検討してほしいのが、これまで積み立ててきた投資信託の新規購入を完全にやめるのではなく、金額を減らして継続し、減らした分の金額で別の投資信託を買っていくというやり方です。
「ドルコスト平均法」の効果を考えると、同じ投資信託への積み立てを完全に止めずに、少額でも続けていくという考え方もアリです。一定金額ずつ積み立てる場合、投資信託の価額が高いときには少ししか買えず、価額が安いときにはたくさん買えることになりますので、投資信託の平均購入価格が自然と下がっていきます。この効果により、価額が上がった時に利益を出しやすくなるからです。
「つみたてNISA」の投資信託を変更すべきはどんな時?
Q:より安い信託報酬の商品が追加されたら変更すべき?
A:信託報酬が0.2%以上違うようなら、変更してもいいでしょう。
例えば、インデックス型の投資信託の場合、ベンチマークとなる指数が同じであれば、日々の値動きもほとんど同じになるはずです。となると、運用で差が出るのは保有中のコスト、つまり信託報酬です。信託報酬が低いほど得られる利益は増えますし、投資期間が長くなるほど信託報酬の安い投資信託と信託報酬の高い投資信託の利益の差は大きくなります。
もし、現在、信託報酬が高めの投資信託を積み立てているのであれば、信託報酬の安い投資信託に変更したほうがいいかもしれません。目安としては「信託報酬の差が0.2%以上」ならば、積極的な変更を検討しましょう。
これから「つみたてNISA」を始める人は、はじめから信託報酬が0.1%台など、圧倒的に低い投資信託を選べば、これ以上、信託報酬が大きく下がることも少ないでしょうから、今後、運用商品を変更しなくてもよくなります。
信託報酬の最安値にこだわるなら、「eMAXIS Slim」(三菱UFJ国際投信)や「<購入・換金手数料なし>ニッセイインデックスファンド」(ニッセイアセットマネジメント)のシリーズがいいでしょう。これらのシリーズは信託報酬最安値を目指して信託報酬の値下げ合戦を繰り広げています。
Q:積み立てている投資信託が大きく値下がりしました。別の投資信託に変えたほうがいいでしょうか?
A:投資信託の値下がりは大きなチャンスになる可能性もあります。
2020年2月以降、新型コロナウイルスの影響で市場は大きく値下がりをしています。多くの投資信託も、値下がりしていることと思います。別の銘柄に変更というより、もう売ってしまいたい!と考えている人も多いのではないでしょうか。
もちろん、将来の保証はできませんが、あえていえば、積み立てている投資信託は売却せずにそのまま持ち続けることをおすすめします。
下図は、金融庁の資料をもとに作成したものです。国内外の株式や債券に100万円を投資したとき、保有期間5年間と保有期間20年間で、収益率がどう変わるかを示しています。
Q:リスクをより下げた運用に変えたいです。
A:「株式型」から、株式・債券などに分散して投資する「バランス型」への変更もできますが……。
「つみたてNISA」の投資信託には、株式に100%投資する「株式型」と、株式・債券・不動産などに分散して投資する「バランス型」の2種類があります。一般的に、債券より不動産、不動産より株式に投資するほうが高リスクといわれています。また、国内より先進国、先進国より新興国に投資するほうが高リスクとされています。ですから、株式型からバランス型に変更したほうがリスクは下がるでしょう。
しかし、当初のポートフォリオを崩して、闇雲に株式を減らしてしまうのも考えものです。市場が値上がりしたときに、値上がりの恩恵を相対的に受けにくくなってしまうからです。
「つみたてNISA」では、「20年間非課税で運用できる」ということ自体が何よりのリスク低減策です。初期の商品選びの段階できちんとポートフォリオを組んだら、あとはコツコツと長期間積み立てを続けることが大切。そうすることで、複利効果と相まって、堅実にお金を増やすことができるでしょう。
「つみたてNISA」では、リバランスのためにスイッチングすると非課税枠を消費することになってしまいます。そこで、「つみたてNISA」の中だけで資産のポートフォリオを考えるよりも、「つみたてNISA」以外の資産も合わせて、資産のポートフォリオを考えてバランス調整をするのがおすすめです。
「つみたてNISA」の運用商品を変更したくなったら、この記事を思い出してください。積み立てる商品を積極的に変更したほうがいいのは、信託報酬を大きく下げられる時のみです。それ以外の場合は積極的に変更を考えなくてもいいでしょう。それよりも、「つみたてNISA」を通して「長期・分散・積立投資」をきちんと続けていくことが大切です。じっくりと、お金を育てていきましょう。