つみたてNISAの資産を売るときにも、買うときと同じように、複数回に分けて売却することで、売却価格の値動きのリスクを抑えることができます。全部を一度に売ってしまうと、そのタイミングが「価格が安い」ときにあたってしまうかもしれません。そのときの価格が高いのか安いのかは、後にならないとわかりません。
誰しも、できるだけ高い価格で売りたいと思うもの。とはいえ、一番の高値を予想して、そのタイミングで売るのは難しい。そこで、利益が出ているときには、全てを一度に売却するのではなく、複数回に分けて売るほうがいいでしょう。そうすることで、売却価格が安定します。
老後の生活費のために売却するなら
「運用を続けながら」取り崩すのがおすすめ
まだ先のことになりますが、老後に、生活資金のために「つみたてNISA」を売却する場合は、つみたてNISAの運用を全てやめるのではなく、運用を続けつつ、少しずつ売却(取り崩)していくのがおすすめです。そうすることで、上で紹介したとおりに売却価格も平均化できますし、何より資産が長持ちすると考えられます。
例えば、1000万円を毎月10万円ずつ取り崩した場合と、年5%で運用を続けながら毎月10万円ずつ取り崩した場合とでは、受け取れる金額にどのくらいの差が出るのでしょうか。
1000万円を毎月10万円ずつ取り崩すと、「1000万円÷10万円=100カ月」ですから、わずか8年4か月でゼロになってしまいます。
それに対して、運用しながら取り崩す場合の目安は、「資本回収係数」という数値を使うとわかります。
「年利5%で運用しつつ毎月約10万円を取り崩す」との条件と合致する係数を探すと、0.12039(黄色部分)が該当します。
※年利5%の列から条件に合う係数を探します。「1000万円×0.12039=120万3900円」なので、ほぼ月10万円(120万3900円÷12≒10万円)となり、0.12039だとわかります。
そこで0.12039から左に視線を移すと「11(年)」とあります。これの意味するところは、「1000万円を年利5%で複利運用しながら月10万円取り崩す場合、おおよそ11年もつ」ということです。
運用せずに単純に取り崩した場合は、ゼロになるまで8年4カ月でした。一方、運用を続けながら取り崩す場合を試算すると11年ももつことがわかりました。資産を長持ちさせるためには、運用しながら取り崩すのがおすすめと言えるでしょう。
非課税期間が終わっても
課税口座に移して運用すればいい
「つみたてNISA」で非課税投資できる期間は20年もあります。2018年に積み立てをスタートした分は2037年に非課税期間終了、2019年に積み立てをスタートした分は2038年に非課税期間終了……というように、20年経過後は、随時、非課税投資期間が終了していきます。
実は、つみたてNISAの資産は20年の非課税投資期間が終わっても運用を続けることができます。20年経過後は、非課税ではなくなってしまいますが、つみたてNISAの資産は課税口座に移るだけなので、運用を続けられるのです。課税口座に移った分は、値動きを見つつ、売っていくことができます。
つみたてNISAは長期投資が基本です。その間には暴落もあるかもしれません。それでも慌てず、じっくりと取り組んでいきましょう。つみたてNISAでお金を増やす最強の戦略は、「投資していることを忘れること」です。投資は“感情との戦い”と言われるくらい、感情は邪魔なもので、「ほったらかし投資」こそ王道なのです。あなたもぜひ実践してみてください。